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2006年06月19日

祖父と話す

週末、実家に帰っていた。
正月ぶりである。
実家に帰ると、かならずすることがある。
祖父と話す。

まずはじめに、祖父は今どんなことをしているのかを僕に聞く。
祖父は僕を学者にしたかったらしく、
口には出さないが、就職をしたことについてはあまり好ましく思っていないようだ。
一時期、博士進学を考えたことがあり、それを祖父に話すと手を打って喜んだ。
祖父は新聞を熟読しているので、僕の会社のこともよく知っているのだが
それでもあまり興味を持てないらしく、
この話はあまり盛り上がりを見せず、次の話に移る。

ここから先は、祖父の話を僕が聞くという形になる。
話すことはだいたい決まっている。

何か欲しいものがあったら工面してやるから、遠慮なく言えよ。
保証人にだけはなるなよ。
女には気をつけろよ。(具体的にどう気をつけたらよいのかは教えてくれないが)

そういうことを、おもむろに話す。
そういう話を、僕は新聞を読んだり、よそ見をしたりしながら、聞いている。

お世辞にも行儀の良い聞き方ではないと思うが、
祖父はそれに憤慨することもなく、
やや遠い目をして話を続ける。
祖母はお茶を入れたり、茶々を入れたりしながら
相づちをうって聞いている。

多分、祖父にとって、孫が話を聞いているかそうでないかは問題ではなくて、
孫と同じ時間を共有していることがいちばん大事なことなのだろう。
それは孫も同じである。
祖父と孫は同質の人間だと思う。
どちらもウブであるから、そうやって時間を共にして、
少しずつ家の精神を伝承していくしかないのである。

祖父は長男で、18のときに出兵して特攻隊になった。
出撃直前になって終戦を迎え、その後は兄弟を学校に通わせるために、
自分は家業である農業を継いで働きまくった。
そんな祖父だから、勉学に対する興味関心は人一倍で、
その情熱を僕に昇華してもらいたいと思っているようだ。

昔はそういう祖父を身勝手にしか思うことができず、疎ましく思っていた。
といってもシャイな僕は面と向かって「うるせえ」などと言えず、
お利口な振りをして話を聞いていては、腹の中では反発をしていた。

祖父の言葉が素直に体に入ってくるようになったのは、
20歳を過ぎてからだった。いろんな意味で大人になった時期である。

祖父はことしで、確か、78歳。
まだまだ元気だが、僕が生きている間にこの世からいなくなると思う。
その日まで、僕は、新聞を読みながら、よそ見をしながら、
それでも祖父の魂を少しでも体に住まわせるために、
祖父のいる洋間に出かけるだろう。

ちなみに父親とは、面と向かってそういう話をあまりしない。
父親が照れ屋なこともあるだろうが、
僕の反抗期が未だに続いていることも原因かもしれない。

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