2008年06月13日
母性
小学校を卒業する直前に、肺炎になって入院した。
元々、風が長引いており、体調が悪かった。
しかし卒業前というのは、
「6年生を送る会」があったり中学校見学があったりと、
色んなイベントが盛り沢山だったため、休みたくなかった。
そんな風に無理をしていたら、
ある日めちゃくちゃしんどくなり、
母親に連れられて病院に行った。
診断の結果、「マイコプラズマ肺炎」という
かなり近未来的な病名の肺炎にかかっていることが判明し、
そのまま入院することになった。
病室に連れて行かれるや否や、
太い注射を何本も刺された。
普段はいやがるところだが、そのときは、
「これで治るんなら、いくらでも刺すがいい」
とかなり達観した心境になっていた。
夜になり、幾分楽になったが、
それでも体を動かすことができず、トイレに行けない。
そこで、トイレに行かなくても用を足せるよう、
母親が看護婦さんに頼み、尿瓶を持ってきた。
尿瓶=老人、という固定観念を持っていた僕は、
こんなに早い年齢で尿瓶を使うことになった自分を呪ったが、
実際に使ってみるとなるほど便利だ。
何回か小便をし、尿瓶には着実に僕の尿が満たされていった。
夜中になり、ふと目が覚めた。
母親は隣で寝ている。
不意に、手元にあったマンガを読もうと思い、
体を起こしたとき、どういうわけか尿瓶が倒れてしまい、
たまっていた小便が全て病室の床にこぼれた。
そのときはすでに尿瓶の8割方は尿で満たされていたから、
そのこぼれっぷりはドリームシャワーの比ではない。
ジャ〜だかジョロロ〜みたいな音を立ててこぼれる小便を
見守る状況というのはかなり情けなく、
こぼれ終わった後、僕は泣くしかなかった。
母親がふと目をさまし、どうしたのと僕に聞いた。
僕は泣きながらごめんなさいとばかり言っていた。
おしっこをこぼしましたなんて、お漏らししたみたいで
恥ずかしくて言えなかった。
母親は辺りを見回して状況を察知したようだった。
何も言わず、ぞうきんを持ってきて、せっせと小便を拭いた。
病室と洗面所を何度か往復して、小便を拭き終わると、
僕の頭をなでて、眠った。
僕は呆然としながら、
母性というのはこういうことを言うんだなあと思った。
そして、自分はこの人の子どもで良かったと思った。
肺炎は2週間ほどして治り、学校に行ってみると
卒業関連イベントは全て終わった後だった。
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