2010年05月31日
自由すぎる教授とのイタリア滞在日記(3)
さすがに昨日は疲れていたのか、7時ごろに起床。先生がコンロの前で何かしていたので、お湯を湧かしているのかと思ったら昨日パックしてもらった食事の残りを火にかけていた。先生、それはちょっとやばいっすよ。え、底がアルミだし、大丈夫なんじゃないの。でも先生、あそこに電子レンジがありますから、皿に移して温めましょう。あ、ほんとだ、じゃあそうしよう。
下に降りるとアンドレアさんがいて、もうすぐピライノさんが来るから大学まで車に乗せてもらったらと提案してくれた。先生は歩いて待っている間アンドレアさんが紅茶を入れてくれた。先生はコーヒーが苦手で紅茶を飲んでいたのをずっと覚えていたのだそうだ。
朝の紅茶を楽しむ先生達
なぜかドラゴンボール
アンドレアさんの家には絵がたくさん飾ってある。その中の半分くらいはアンドレアさんが描いたものだ。先生はアンドレアさんの絵の中で昆虫や動物を描いたものが好きらしいのだが、僕は崖の上に家が並んでいる絵が好きだった。
ピライノ教授の車で大学に行き、ボエロ教授のところに行く。昨日のピライノ教授に引き続き、今日はボエロ教授のインタビューを撮影する。ボエロ教授のリクエストでオリーブに囲まれた怪しげな石段のところでインタビューを開始するも、3分程撮影していたら電池のバッテリーが底をついてきた。昨日ピライノ教授のインタビューを撮影してから充電するのを忘れていた。
やばいと思いながらも、ボエロ教授があまりにもノリノリで話しているので止めるに止められず、6分程経過したところで電池が切れた。これはやばい。急遽パソコンを取り出し内蔵カメラで撮影することにするが、慌てて操作を間違ったりしてうまくいかない。そうこうしているうちにボエロ教授の話が一段落し、おいお前ちゃんと撮影できてるのかと聞かれた。はいちゃんと撮影できてますよとごまかしたが、でもお前カメラの前に立ってたじゃねえかこの野郎と言われてすぐにばれた。音声は別マイクで保存できているので、切れている部分は画像を挿入してごまかすことにした。その後はパソコンで問題なく撮影でき、ボエロ教授の機嫌も収まった。危ない危ない。
インタビュー終了後、南端の海岸に行くことになった。9月に開催される学会の会場とホテルがあるらしく、先生が下見をしたいそうだ。クロアチアから来たイヴォナという女の子が車で連れて行ってくれるらしい。他に初日に来たジャコブ君とジョルジュ君がついてきてくれた。
イヴォナ
ジャコブ(右)とジョルジュ(左)に囲まれ上機嫌のイヴォナ女史
ジョルジュ君は西武警察ばりのグラサンを付けており見た目ちょっと怖いのだが、話をしているうちにどうやら彼がシチリア島出身だということが判明する。ジョルジュ君だけでなくジャコブ君もシチリア島出身らしい。僕は後部座席で彼ら2人に挟まれた格好で座っていたのだが、以後姿勢を正して礼儀正しくすることにした。
30分程すると海が見えてきて、イヴォナが車を止めてここが学会会場ですと言った。車を降りて近づいてみたらそこは小さな博物館だった。海の生物の化石や標本が置いてある近くに、椅子が並んだ小さな部屋があった。ここでメインの発表やらが行われるらしい。先生、めっちゃ狭いですけど大丈夫っすか。あー、参加者は40人くらいだから充分充分。しばらく見学していたらスタッフらしき兄ちゃんが先生に近づいてきて、博物館について色々説明した後、博物館の紹介ビデオを見せてもらった。ビデオには色んな海の生き物が次々に出てきて、先生はその都度生き物の名前を教えてくれた。
ホテルへはスタッフの人が車で案内してくれることになった。ところが先生は歩いて5分くらいの場所にあるから歩きましょうと主張し、結局みんなで歩くことになった。海岸に出て、スタッフの人がホテルはあそこです、というと、先生が、あれ、あんなに遠いの、だいぶ歩かなあかんなあと言って皆のひんしゅくを買っていた。
海辺で黄昏れるおじさん
海辺で働くおじさん
海辺で打ち合わせをするマフィアじみた学生達
ホテルにはぴっちりした黒シャツを着たマスターらしきおじさんがおり、部屋を案内してくれた。学会期間中、午後は自由時間で各自海で生物を採取したり実験したりできるらしく、先生はしきりにシーサイドの部屋にしてくれとおじさんに主張していたが、おじさんはその都度ここは海に面したホテルだから全部屋シーサイドだと説明していた。
先生の英語は文法的にやや問題があり、一見何を話しているのか良く分からないのだが、相手にはきちんと伝わっている。それは先生の言葉には熱がこもっており、何かを伝えたいということがよく伝わるので、相手が内容を理解しようと傾聴し、想像してくれるからだと思う。
ホテルから出ると、イヴォナが心なしかイライラしている。どうやら早く大学に帰りたいようだ。先生はそんなことは全く気にせず近くのジェラート屋に連れて行ってくれた。今まで先生におごってもらっているのでここは僕がクレジットカードで払いますと言ったが、結局先生が皆におごってくれた。美味しい美味しいといいつつも、みんなイヴォナが気になって若干早めに平らげる。さあ出発しようかと立ち上がった瞬間にトラックが前を通り過ぎた。果物売りのトラックで、先生は見た瞬間にこれは買わねばなるまいと走り出す。先生はチェリーを1袋買うことにして、お金を払おうとしたら高田純次似のジェラート屋店長が俺のおごりだといってチェリーを渡してくれた。先生はいたく感激し、店長に名刺を渡していたが店長は電話中で若干対応に困っていた。
電話中の店長に名刺を渡す先生
車に乗るとイヴォナのイライラは頂点に達し、遠回しではあるが露骨に早く帰らないと行けないんだけどと言い出した。遠くから友達が来ており、今日しか会えないのだそうだ。先生はお土産を買う為にどうしてもスーパーに行きたいらしい。先生は明日帰国するのでこの主張は譲れないらしい。先生はイヴォナにすまんねすまんねと言いつつ、逃げ水現象とその日本語の由来をイヴォナに教えたりしていた。結局大学近くのスーパーに寄り、お土産の紅茶パックを明日の朝食を速攻で買って大学に戻った。先生は無事お土産が買えて大変満足げだったが、よく見ると買った紅茶パックのうち1つにはメイドインスリランカと書いてあった。
スーパーの攻略計画を検討する銀行強盗らしき男
大学に戻ると、先生がビデオを見ようと言い出した。10年前に撮影した実験ビデオがあるらしい。実験室のビデオデッキで見始めると、クラゲの顕微鏡映像がひたすら続いていた。先生は最初、いやーこれは懐かしい、白浜で穫ったベニクラゲですよなどとはしゃいでいたが、数分後に早送りで見ましょうかといい、最終的に寝ていた。合計15時間のビデオを10倍速で見たために90分で見終わった。
時計は17時を回っており、いったんアンドレアさんの家に戻って休むことにした。先生の凱旋を祝し、今日はアンドレアさんの家にみんなが集まってパーティーが開催されるのだ。先生は相当眠いらしく珍しく無言で歩いていたが、大学の駐車場に桑の木を発見し、近づいて実を食べたところものすごく美味しかったらしく、いやーこれはホントにすごい、白浜にも桑の木があるけどこんなに甘いのは見たことがない、熟してない赤い実でもすごく甘いよ、やっぱり太陽が良く当るからだねえ、太陽さん美味しい果物をどうもありがとうなどと話しながら実を食べまくっていた。ようやくほとぼりが冷めたようでさあ行きましょうかと歩き出し、いやー美味しかったですねえといいながら別の桑の木に近づき、再び実を食べ始めた。これをあと2回繰り返し、合計100粒以上の桑の実を平らげて先生はとても満足げだった。
家に帰るとすぐに寝た。8時半ごろにノックの音がして、開けると見知らぬ女の子が立っていた。ボエロ教授の娘でガイラという子らしい。10年前は6歳だったガイラに先生は驚愕していた。ガイラに連れられて下に降りるとそこにはピライノ教授をはじめ10人くらいの人が集まっていた。昨日会ったピライノ教授の彼女と息子も来ていた。先生はお土産として梅干しを持ってきていたが僕は何も持っておらず、しょうがないのでおやつとして持ってきた「きのこの山」の小さい袋入りを集まっていた子供にあげてみたところ割と好評だった。
暗くて良く分からんけどパーティーの様子
ボエノ教授は陽気で、カケコキク、コケクキカとしきりに繰り返している。先生がサシスセソとかナニヌネノとかいくつか教えてあげると、ザジズゼゾとかパピプペポなどと勝手に他の子音の行を言い始めた。教授、それはまだ先生が教えてないですよというと、自分で発明したんだと言った。すげえな教授。
アンドレアさんが作ってくれたパスタはとても美味しかった。申し訳ないが昨日ピライノ教授に連れて行ってもらったレストランよりもよっぽど美味しい。作り方を聞いてみたら、詳しくは分からなかったが具材や調味料を入れる順番が複雑で、下味をしっかり付けているようだった。パスタの後、サラダとチーズとフルーツとジェラートとアンドレアさん手作りのケーキを食べてお腹がいっぱいになった。冷えてきたので2階に上着を取りに行き、座って体を温めていたら、下から何やら音楽が聞こえてきた。よく聞くとどうも日本語で、どうやら先生が持ってきたカラオケDVDが上映されているようだ。これは見なければと急いで下に降りてみたところ、DVDを見ていたのは眠そうなボエロ教授だけだった。22時を過ぎたころに皆が家に帰りだし、僕らも寝た。
半寝のボエロ教授に歌詞の説明をする先生
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