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2006年02月05日

連載小説 愛の流刑地 6

「ここまでくれば、もう大丈夫だろう」

棒のようになった足を引きずりながら、いつのまにかレンタルビデオショップに紛れ込んでいた。
目に留まったものから2,3本、気まぐれにビデオを取り上げると、おもむろにレジへと向かった。

「すいません、返却はいつにしますか?」
無駄に綺麗なキューティクルを見せつけながら、長髪の店員が言った。

ふいに中井は、パラパラの曲をリクエストして、この店員がどれくらい和田サンに近づきつつあるかを確かめたい衝動に駆られたが、平常心を取り戻し、店員にこう告げた。

「僕の髪が肩まで伸びて 君とおんなじになったら返却します」

店員は一瞬虚をつかれたれたような感覚に襲われたが、平常心を取り戻し、店員にこう告げた。

「失礼ですが、お客様の髪は紆余曲折視ながらも水平方向に伸びていらっしゃるようなので、
いつまで経っても肩には届かないと思うのですが」

してやられた、と、中井は思った。

今ここに和田サンがいたのなら、どちらに大量の酒を飲ませるかは一目瞭然なのであった。

<終わり>

2005年12月10日

連載小説 愛の流刑地 5

中井は、ひたすら南へと走った。
中井は、ひたすら原へと走った。
中井は、ひたすら清へと走った。
中井は、ひたすら隆へと走った。

<続く>

2005年12月07日

連載小説 愛の流刑地 4

聞き覚えのある声に、思わず足がすくんだ。
まさか赤堂がこんなところにいるわけがない。
そう自分に言い聞かせながらも、中井の足は無意識のうちにその場から立ち去ろうとしていた。
赤堂はそんな中井の気配を察知し、とっさに髪の毛をつかみ、中井を引き戻そうとしたが、どれだけ引っ張っても手繰り寄せている感触が無かった。

中井の髪の毛は、実は1本につながっていて、引き伸ばすと地球を半周するほどの長さになることを、赤堂は忘れていた。

中井は、ひたすら南へと走った。

<続く>

2005年12月06日

連載小説 愛の流刑地 3

中井は献血車の前にいた。
結局、親父の軽やかな営業トークに連れられて、献血につれてこられてきたのだった。

昼間からテレクラに入り浸るようなたたずまいで献血者に乗り込む親父を尻目に、中井は献血者に乗り込めずにいた。

3徹明けの中井の血液は、ポマードよりもじっとりとしていることこの上なく、こんな血液を提供することで、どれほどの役に立てるかが分からなかった。

中井の頭には、3年前の光景が頭に浮かんでいた。

あの時、俺があっちのネジを選んでいれば・・・

このところ毎日思い出すことを、今日もまた、思い出したのだった。

とそのとき、中井の背後から声がした。
「あのすいません、このメガネ、貴方のですか?」

<続く>

2005年11月26日

連載小説 愛の流刑地 2

出前の親父は、一瞬たじろいだが、ねっとりとした目つきで中井を見据え、こう言った。

「今日私誕生日、献血しよう」

中井は身じろぎもせず、こう言った。

「駅前に、献血ルームがあるよ」

親父はすかさず、こう切り替えした。

「じゃ、行こう」

この深い絶望の中で、中井は、数百ミリリットルの血液を抜くことなど大したことではないと感じたが、理性を取り戻し、静かにこういった。

「僕がしたいのは、献血ではなくて、毛ん血なんです」

<続く>

2005年11月17日

連載小説 愛の流刑地 1

<連載小説 愛の流刑地①>

その日、中井は製図室にいた。
明日の提出課題がまだ完成しておらず、ここ3日間徹夜続きで、疲労はピークに達していた。
自分に往復ビンタを食らわせて気合を入れなおし、作業に取り掛かろうとしたそのとき、誰かがドアをノックした。
いぶかしげにドアに近づく中井。ドアを開けようとしたそのとき、体が何かに取り付かれたように動かなくなった。
「あのー、ざるそば、お持ちしました」

中井はざるそばを注文した覚えは無かった。

「麺類は、自分の頭で十分です」

<続く>

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