技術法務のススメ 事業戦略から考える知財・契約プラクティス

  • 著者: 鮫島正洋
  • 印象: 3 (1-3)
  • 読んだ時期: 2020年2月

 

下町ロケットの神谷弁護士のモデルになった弁護士が著者の本。法務という切り口で事業戦略のあり方を論じたもの。いわゆる知財戦略をどうやって作るかを知るために購入した。

 

一般的に知財戦略というと、まず特許ポートフォリオを作ろう、という発想になりがちなのだが、特許ポートフォリオの作り方が分からずいきなり途方に暮れる というのが今までの僕のオチだった。この本で示されている「知財戦略セオリ」という概念は、非常に分かりやすく実践的で、大変参考になった。

 

「必須特許なくして事業参入なし」というのが基本的な考え方。事業化に必要な特許を持っていなければ事業に参入することはできないから、1) 自社に必須特許があるかどうかを調査し、2) その必須特許を維持、取得するためのコストを事業参入によって得られる利益を基準として算定しましょう、というもの。

1) を実施するための調査方法も紹介されているが、かなりざっくりした感じだが無料のデータベースを使ってもできるもので、実際にやってみながら理解することができた。特許ポートフォリオという大層なものではないが、会社に法務部とか知財部がないような小さな会社でも取り組める考え方が示されていて、素晴らしいと思った。

 

後半では、開発で重要になる共同開発や秘密保持などの契約について述べられている。ページ数は少ないが、押さえるべきポイントが示されており分かりやすかった。僕はこの本を読んだ後に、西村あさひの弁護士が書いている秘密保持契約の本に進んだ。

 

内容をちゃんと覚えていないが、なぜこの本を書くことにしたか、ということが前書きで述べられており、説得力があるし、共感できた。

 

こういう人が世の中にもっと増えたら、創業者的な人が安心して突っ走れるようになるんだろうなと思う。