ルーンショット クレイジーを最高のイノベーションにする

  • 著者: サフィ・バーコール
  • 印象: 3 (1-3)
  • 読んだ時期: 2020年4月

 

最初は非常識、クレイジーと思われて誰にも相手にされないが、後に大きなブレイクスルーを引き起こす可能性があるアイデアを「ルーンショット」と定義して、そのルーンショットを継続的に生み出すための手法を説明した本。

重要なのは組織であり、1) 確立された技術の改良により利益を生む「フランチャイズ」のチームとは別にルーンショットのチームを作る、2) 失敗が当たり前で潰されやすい後者を (偽の失敗などの罠や外部圧力から) 守る、3) 2つのチームの交流を一定レベルに保つ (本質的に対立しやすい2つのチームを平等に愛する) ことによって、継続的にルーンショットを生む組織を作れる というのが本書の主張。

ルーンショットは、一般的に説明される「ムーンショット」や「破壊的イノベーション」とは異なり、アイデア段階では誰も (発案者ですら) 価値を理解できない、という考えが基本になっており、そのため目利きによる技術の選択と集中は無意味 (とまでは書かれていないがそんな風に読める) で、だからこそ組織が大事だ と主張されている。

僕は日頃から、何がブレイクスルーを生むかというのは誰にも分からず、ブレイクスルーした後の説明は、経営者の自伝のように後付けの帳尻合わせでしかないと感じているので、本書の主張には共感できたし、納得感があった。

ルーンショットを生み出す力学を相転移のアナロジーとして説明しているが、理論的根拠はないので、こじつけ、後付けと言ってしまえばも身も蓋もない。また、ルーンショットの成功事例として紹介されているエピソードも、たまたまうまくいった例を持ち出してるだけで、同じようにやっても失敗した事例がきっとありますよね、と言ってしまえば身も蓋もない。

要するに、いわゆるイノベーティブな組織づくりのための1つの手法を提案しているものであって、それを採用するかどうかは読んだ人次第だと思う。僕自身にとっては、上記の通り、共感できるところが大きかったので、参考になりそうだと思った。

今回は邦訳版を読んだが、読みやすかったし、著者のユーモアがうまく日本語でも表現されていると感じた。

 

余談だが、本書の邦訳版はエヴァンゲリオン風に、いろんな言葉がいろんなレイアウトで並んでいるので、何が正式タイトルなのかがよく分からない。