読書感想: クスノキの番人
- 著者: 東野圭吾
- 読んだ感じ: 2 (1-3)
- 読んだ時期: 2025年1月
直井玲斗は、生まれた頃から母子家庭で、しかも母親は既に他界しており、天涯孤独の身である。高校卒業後に就職した機械メーカーで、製品の欠陥を顧客に教えたことがきっかけで解雇されて、その腹いせに会社の装置を盗み出そうとしたところを警察に捕まるが、柳澤千舟という謎の女性の助けで釈放される。柳澤千舟は、玲斗の母親の義理の姉であり、玲斗は助けられた見返りに、千舟が管理する神社で番人をするよう命じられる。
その神社には巨大なクスノキがあり、昼はパワースポットとして賑わっているのだが、夜になると謎の儀式が行われている。千舟から詳しいことは何も聞かされないまま、昼は神社の手入れ、夜はクスノキの番人を勤めるうちに、クスノキで行われている謎の儀式の意味が少しずつ分かってくるとともに、祈念にやってくる人間たちの諸々の人間関係に巻き込まれていくことになる。
クスノキの儀式は、簡単にいうと、自分の意識 (作中では念と呼んでいる) をそのまま、他の人間に渡すことができるというものである。新月の夜に祈念した人間の念がクスノキに保管されて、満月の夜に他の人間がその念を受け取ることができる。念を受け取れるのは、血縁関係がある人間のみであり、かつ、その人間と深い関わりを持つ人間に限られる。
音楽の才能に恵まれながら最終的に廃人になってしまった男の話が切ない。