• 著者: 白石一文
  • 読んだ感じ: 1.5 (1-3)
  • 読んだ時期: 2025年2月

 

ある小説家が住む、新宿二丁目の跡地にできたタワーマンション内で、外国の要人が謎の死を遂げる事件を追求していく話。

 

小説家は、ある市販の薬を飲むと幽体離脱できるという特殊能力を持っている。その能力を用いて、周囲を徘徊している内に、楠正成の銅像みたいなものに遭遇し、そいつが実は謎のAIロボットであって、そのロボットとともに、事件を解決していく。

 

全体的に、設定が色々ありすぎてよく分からない。幽体離脱、AIロボット、隕石衝突による新宿二丁目の消滅、インド財閥、人工子宮、不射の射など、どれか一つだけでも小説のテーマになりそうなものが、全部乗せになっていて、読み進めるうちに、著者がやりたいことに付き合わされている感じがしてくる。

 

ハードカバーで600ページくらいの、結構なボリュームの小説なのだが、テーマが多すぎるので、それぞれのテーマを彫り下げきれてなくて、テーマ間が無理やりつながっている感じがして、だんだん読むのが辛くなってくる。

 

最終的には、人間にとってセックスは必要なのか? みたいな問いが残るのだが、そのテーマを語るためにわざわざ、AIロボットを両性具有のセックスマシーンに仕立てる必要もなかったのではないかと思う。AIロボットの思考ベースは楠正成になっているのだが、その設定も結局あんまり活かされていない。

 

ものすごく中途半端なところで小説が終わるため、途中で連載中止になった漫ジャンプマンガ最終回を読んだときのような読後感だった。