• 著者: 重松清
  • 読んだ感じ: 2 (1-3)
  • 読んだ時期: 2025年3月

 

私立中学受験に落ちて引きこもりになった息子と、テレクラで不倫を繰り返す妻と暮らす生活に絶望して、もう死んでしまおうかと思っている男の下に、親子連れが運転するホンダのオデッセイが現れて、男を過去の世界に連れていく話。

 

男は過去に自分が生きた瞬間にタイムリープして、同じ場面を追体験する。その場面は、例えば妻が夫に嘘をついて不倫をしている場面 (男はその時、妻の嘘を疑いなく信じていた) であったり、息子が模試の後にひどく落ち込んでいる場面 (男はその時、息子にとにかく頑張れと発破をかけまくっていた) であったりする。

 

追体験の場面では、自分と同い年の父親がなぜか登場する。男の父親は事業家で、消費者金融じみた会社を経営し、自分の価値観を息子に押し付けて生きてきた人間で、男は中学生の頃から父を恨んでいた。男は、自分と息子の関係を、父親と自分との関係と重ね合わせながら、妻と息子と父親のことを少しずつ理解していく。

 

タイムリープしているときは、過去と違う行動をとることは出来るが、未来は変わらない。最終的に、男は親子と会った場面に戻って、自分の人生ともう一度向き合う努力をはじめる。

 

男を過去に連れていく親子は実はすでに死んでいる幽霊的な存在で、現世に未練があって成仏できない状態でいるのだが、なんだかんだで楽しそうに暮らしているのが、うらやましいだか理不尽だか、何とも言えない気持ちにさせられる。