読書感想: 魔女はささやく
- 著者: 宮部みゆき
- 読んだ感じ: 2 (1-3)
- 読んだ時期: 2025年4月
幼い頃に、役所の金を横領した後に失踪した父を持つ日下守が一緒に住んでいる、タクシー運転手である叔父が、ある時女性を撥ねて殺してしまった。叔父は女性が信号を無視して飛び出してきたと主張するが目撃者はおらず、女性の死に際の発言も相まって叔父の交通違反を疑われ、警察に勾留される。
守は幼い頃に鍵師から鍵開けスキルを伝授されており、そのスキルを駆使して女性の部屋に侵入する。部屋の留守電メッセージなどを調査した結果、女性が過去に恋愛詐欺で男から金をだまし取っており、同じ詐欺を働いていた女性が、過去に2人自殺していることを知る。
女性を取材したライターや、同じ詐欺を働いていた別の女性 (まだ殺されていない) と会ったりするうちに、事件の真相と、父親が失踪した本当の理由が少しずつ明らかになっていく。
結果的には、恋愛詐欺の被害者で大事な人を亡くした人間による復讐なのだが、その殺害方法が催眠術を駆使して自殺に見せかけるといったものであり、現実的にあり得るのかというのが疑問として残る。
途中、守がアルバイトする書店の万引き防止対策でサブリミナル効果が活用されているというくだりがあるのだが、上記事件の真相に関係しているようでしておらず、何の伏線だったのかがよくわからない。
基本的にはミステリーなのだが、守が身にふりかかった不幸を家族や友人とともに少しずつ乗り越えていく話でもある。守は実父の横領により幼い頃から友達がおらず、叔父と住み始めると今度は叔父が女性を車で轢き殺したと疑われ、学校で孤立するのだが、そんな状況の中で守を気遣う女友達の姉御こと沙織が素敵すぎる。