読書感想: ゴースト
- 著者: 中島京子
- 個人的な印象: 2 (1-3)
- 読んだ時期: 2025年11月
幽霊的な存在が登場する話の短編集。自分が幽霊的だったり、他人が幽霊的だったりする。見える人と見えない人がいる点は一般的な幽霊と類似するが、本書のゴーストは基本的に有形であり、そのゴーストを認識できる特定の人間とだけだが物理的にコミュニケーションを取れる。コンビニから食べ物を万引きしたり、紙飛行機を折ったり、エッチまで出来る。
物理的に接触できたら、それはもはや生きている人間と変わらねえじゃねえか とも思うが、そもそも幽霊的な存在も、それを見た人間の思い込みとか錯覚のようなものから生まれた存在なのだとすれば、その思い込みが視覚、聴覚以外の五感にも拡張されただけだと考えれば、ゴーストと対峙する側の人間からすれば、そんなにおかしな存在ではないかもしれない。
ただし本作のゴーストには明確な自我が存在するので (ゴースト側からの心理描写がある)、人間の思い込みから生じたわけでもないかもしれない。生きている人間と何が違うのか という疑問に立ち返ると、一度死を経験したか否か くらいの違いしかないのかもしれない。
1/3くらいは明確な結末がない感じで終わるが、全体的に切ない。(多分)戦争中に3人の子供と生き別れになり、「キャンプ」で傷を癒やしながら何かを待っているマツモト夫人の話が大変切ない。